第2回-(2) 済州島の堂クッ―概況と事例(2012/9/29)


金良淑(東京大学大学院博士課程) 

 韓国最南端に位置する済州島には、村ごとに1つ以上の堂(tang)が存在する。堂とは、村落守護神や生業守護神、産育神などを祀る聖所であり、それらの堂神の来歴譚であるポンプリ(巫歌)が伝承されている。これらの堂では、特定の祭日に共同体の祭りとして行われる「堂クッ(堂祭)」や、個人が日を選んで行う「ピニョム(祈願)」が営まれてきたが、近年の急速な産業化や都市化、村落共同体的社会の変化、あるいは堂クッを司祭する世襲巫であるシンバン(simbang)の減少などにより、堂が消滅したり、堂クッが行われなくなるケースも増えている。しかし一方で、現在でも定期的に堂クッの行われている村もあり、それらの事例から済州島の村落における堂信仰の特徴を概観することが可能であると思われる。
 村落における堂クッについて考察する場合、中山間に位置する村と海辺の村では、それぞれの自然環境や生業が異なっており、生業と関連した堂神が祀られ、堂クッが行われていることに留意しなくてはならない。特に海辺の村においては、船主や海女たちによるヨンドゥンクッ(風神祭)やチャムスクッ(海女祭)が盛んであるが、これらの儀礼は必ずしも堂で行われるわけではない。堂で行われない場合、海岸や海女たちの脱衣所などが儀礼の場となっているが、これらの儀礼も共同体の祭りとして堂クッの範疇に含めて考えることとする。
 以上のことをふまえて本発表では、済州島の堂の概況を述べるとともに、中山間の村と海辺の村にみられるそれぞれの堂および堂クッを事例として、済州島の堂信仰の特徴について考察したい。