第3回-(2) 金門の宗教文化 ―中元普度および海醮を中心として― (2012/10/20)


  報告者は、2011年11月16日~21日および2012年8月16日~18日の二度に渡り、道教儀礼を中心に金門の民間信仰・習俗の調査を行った。一度目の調査では、主として金寧郷后湖村昭応廟にて海上の亡魂の追善供養、漁民からの日ごろの恩恵に対する感謝および地域の平安祈願ために12年に一度三日間かけて行われる「海醮」と呼ばれる道教と民間信仰が融合した儀典の調査に従事し、併せて現地の宗祠や辟邪物の調査も行った。二度目の調査では、金城鎮後浦浯島城隍廟で行われた転車藏科儀を含む道教式の普度法会を中心に、現地の廟などの調査を行った。金門は台湾本島同様、基本的には閩南文化圏に属するため、これら二度に渡る調査において目にしたものの多くが台湾本島でも観察しうる両島共通のものであったが、しかし、例えば、中元普度の期間中に各家の門に掛けられる普度灯や普度法会で召魂用に用いられる旛旗など台湾本島では目にしないようなものもいくらか見られた。

 そこで、本報告では、前述の二度に渡る金門調査に基づき、金門の信仰・習俗について概観し、さらに調査の主眼であった后湖村昭応廟の海醮および後浦浯島城隍廟の普度法会について適宜台湾の同様の道教儀礼と比較しつつ詳述することで、これら二度に渡る金門調査の調査報告を行うとともに、従来ほとんど顧みられてこなかった金門道教の研究に着手して、金門の道教儀礼の全容解明をはじめ、金門道教の伝承系統、台湾道教との関係、閩南道教史における位置づけなどといった諸問題について考察する第一歩としたい。