沖縄のウンジャミ ― 1996年の図録および蜡祭からの小考


3. 小考-海洋文化のなかの蜡祭

 

 ここでもういちど、蜡祭からウンジャミ祭祀をみてみる。すると、次のようなことがいえるだろう。

 1. ウンジャミは年の節目(折目)にあたる祭祀ということであり、蜡と同じである。 
 2. ウンジャミでは農作物と猪、鼠を結びつけている。亥の日の行事、猪狩り、鼠流しはそれを明瞭にものがたる。一方、蜡祭でも鼠と猪を追いやることが重要なこととして伝承されている。
 3. ウンジャミは東シナ海の海洋文化の痕跡をはっきりと残している。何よりもウンジャミ(海神あるいは海を渡ってくる神)が主神となっている。かつては猪狩りも海神がやったようである。一方、蜡祭では虎や猫が神として招かれて鼠や、猪を追いやった。こうした変異は伝承地の環境によるもので大いにありうる。
 4. ウンジャミを司るのは神女たちである。そこに演戯が付加されるとき、男の神役が登場する。こうしたものが本来のかたちであろう。一方、『礼記』の蜡祭は天子の主宰する祭儀とされている。これは国家規模の儀礼として形成されたあとのかたちであろう。これと較べると、沖縄のウンジャミ祭祀ははるか後世のものである。しかし、神女と男の神役が対をなすのは逆に蜡祭のはじめのかたちを示唆しているともいえる。とはいえ、ウンジャミにおいても猟師役は神女から男の演戯者に移行するあとをみせている。このことは、儺のあそびの様相を強めれば、次第に男が担当するようになっていくことを示している。
 なお、済州島臥屹(ワフル)里でも正月の村の祭祀「新過歳(シングワセ)」のなかで模擬的な狩猟をしている(後掲図版参照)。すなわち山神ノリというものである。これは神房(巫)の傍らで音楽を奏でる助巫二人によって演戯される。ここではあらかじめ神房が山神に祈り、その許しを請うて狩猟をする。つまり山神が獲物をもたらしてくれるのである。一方、沖縄では海神が猪を射る。 このように地域により射手が異なるのは環境の差であろう。いずれにしても、新過歳はその名のごとく、「年末年始の祭祀」の範疇にはいるものである。一般に年末年始の模擬的な狩猟は蜡祭において猪を捕らえた、あるいは追いやったことの名残であろう。
 こうした模擬的な狩猟は日本でも宮崎県椎葉や長野県などでおこなわれている。根源は同じものであろう。

 (2008年10月4日)(同10月14日補遺) (2010年10月24日補訂)                       

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